ゲスト全員が同じ時間を共有できて楽しめるインクルーシブな結婚式

ゲスト全員が同じ時間を共有できて楽しめるインクルーシブな結婚式

26歳でレーベル病を発症した、ご新郎の岩田朋之さん。視界全体がぼやけて見えるロービジョンの視覚障がい者です。社会参加への学び直しをするなかで、ロービジョンフットサル(LVF)と出合い、LVF日本代表にも選ばれ、現在は、CA SOLUA(ソルア)というチームのキャプテンを務めています。

おふたりの出会いは6年前。当時、レーベル病の勉強をしていた美晴さんは、定期健診のために福岡を訪れていた朋之さんと共通の知人を介して出会い、電話やメールのやり取りなどを経て、交際がスタート。プロポーズは2018年。イギリス・マンチェスターの教会だったそう。

約1年の延期を乗り越え、2021年9月、アニヴェルセル 東京ベイで挙式。おふたりで新たな人生を歩み始めています。おふたりにはハンディキャプを抱えるご友人も多く、朋之さん自身、視覚障がい者となってから出席した結婚式で、少し取り残されたような想いをしたことも。自分たちの結婚式ではゲストがそんな想いをすることがないようにと、ゲスト全員が楽しめる結婚式を作ることを一番に考えたと言います。

では、具体的にどんな結婚式になったのでしょうか。今回は、朋之さんと美晴さん、おふたりのインタビューをお届けします。

最初の見学で訪れた「アニヴェルセル 東京ベイ」で即決

最初の式場見学で訪れたアニヴェルセル 東京ベイに、“運命的”なものを感じたおふたり。そして、付帯設備の良さやアクセスの利便性も決め手の理由になったそうです。

最初の見学で訪れた「アニヴェルセル 東京ベイ」で即決

朋之さま:ぼくは、生まれも育ちも東京で、身近な結婚式場がアニヴェルセル 表参道だったんです。“結婚式をする場所=アニヴェルセル”。視覚障がい者になってからも、表参道で実際に式を挙げているカップルを見て、「自分には縁がないけれど、結婚式を挙げる人はいいな」と憧れていました。

それもあり、アニヴェルセル 東京ベイに見学に行きました。見学した式場はこのひとつだけです。プロポーズしたのが、イギリス・マンチェスターだったのですが、その会場にはイギリス館があって、ここしかないと即決でした。

美晴さま:私は(見学)当時大学院生で、「すぐに結婚式は挙げないけど、ふらっと見に行こうか」くらいの感じでした。福岡出身で関東の結婚式場に詳しくなかったのですが、見学に行くとき彼が「(東京で)結婚式と言えばアニヴェルセル」と言っていたこと、そして、いろいろなご縁を考えたときに「ここで挙式するんだろうな」と自然に思いました。

私たちにはロービジョンの友人が多いので、「落ち着いた環境だったらいいね」と話していて、広いガーデンを見たとき、(朋之さんが)サッカーが好きだし、アットホームな感じが気に入って。最後に、会場が「イギリス館」だと聞いた瞬間、「決まりだね」となりました。

朋之さま:プロポーズした“イギリス”と同じだったことが大きいですね。あとは付帯設備やアクセス面。トイレが会場に併設してあるので安心しました。ロービジョンの友人たちが共用のトイレまで行かなくても、自分たちのゲストだけが使うという点で配慮できると思いました。東京駅からアニヴェルセルまで送迎バスが出ていることも安心材料になりました。

障がいのある友人も楽しめる“インクルーシブな結婚式”

おふたりの結婚式のテーマは「インクルーシブ」。“包括的、包含しているさま”を表す言葉の通り、障がいのある方もお子様も、隔たりを感じることなく、その場にいるゲスト全員が同じ時を同じように楽しめることを第一に考えたそう。

障がいのある友人も楽しめる“インクルーシブな結婚式”

朋之さま:テーマは、インクルーシブな結婚式。自分も含め、ゲストとお祝いの場を共有することが大事だと思ったんです。視覚障がいのある友人や子どもたちみんながお祝いの場で安心して過ごせること、そして、自分たちも一緒に楽しめる時間にしたかった。

たとえば、隣りに座っている彼女がどんな表情をしているのか分からないのは寂しかったので、Zoomのアプリを活用して、手元のタブレットで見られるようにしました。

美晴さま:結婚式は、ゲスト一人ひとりの顔を思い浮かべながら準備をしていたのですが、これは他のカップルのみなさんも同じだと思います。ただ、私たちの結婚式に列席してくださるゲストはハンディキャップを抱える方が多いので、その点についてどうしようかと話し合ったとき、自然とこのテーマに至りました。

カラードレスとタキシードの「色」に込めた想い

ロービジョンであるご新郎やご友人のことを考えて、“赤”のカラードレスをチョイスしたご新婦。そして、“シャンパンゴールド”のタキシードを選んだご新郎。それぞれに大きな意味がありました。

カラードレスとタキシードの「色」に込めた想い

美晴さま:ドレス試着の日、「どうなるんだろうね」と笑いながら式場に向かいました。ウエディングドレスは色が白く、彼にとって、細かい柄や模様は特に見えにくいんです。試着室から出てきた私に何か言ってあげたい…でもよく分からない…という気持ちが表情に出ていましたね。

朋之さま:「やっぱり白はよく分からないや」って(笑)。「白いね」しか言えなかったけど、普通への憧れが強いぼくにとって、自分の目で見える・見えないということはどうでもよかった。主役は花嫁だから。

キレイな白のウエディングドレスを着ること、これが歩むべき結婚式の最初のステップだと思っていたので。ドレス試着の最初に気の利く言葉を言えなかったのは切なかったけど、そこで笑いも込めて「白いね」って答えたんです。

美晴さま:でも、インスタグラムはめちゃくちゃ役に立ちました!「#アニ嫁」で検索して、スマホでドレスの写真を一緒に見ていましたね。気になるドレスの写真を保存しておけば、スマホなら拡大して見られるので、すごく助かりました。

結局、ウエディングドレスは自分が好きなデザインを選んで、カラードレスは、ふたりで一緒に悩める色、ロービジョンの友人にも楽しんでもらえる色を選ぼうと思い、赤色に決めました。本当は薄い色などパステルカラーが好きで、普段も赤い色の服は着ないですが、友人に「赤色のドレス良かったよ」と褒めてもらえてうれしかったです。

カラードレス

朋之さま:「自分の好きな色を選んでほしい」って伝えたけど、「せっかくだから」と着てみて、実際にその色を選んだのは美晴らしいし、嬉しかったですね。ぼくがタキシードを決めるときは、「シャンパンゴールド」を提案されて、「それだ!」って。

実は、主治医から「君はガールフレンドはいるのか?」と聞かれたことがあって、当時、彼女と出会う前で、「将来結婚したいか?」と聞かれ、「できないと思うけどできたら良いですね」と答えました。結婚するためには「君自身が輝いていないとダメだ。将来パートナーや子どもを守ることになるから、輝いていることが大事なんだよ」と言われ、そのときは何を言ってるんだと思っていたけど、試着室で主治医の言葉を一瞬で想い出して、シャンパンゴールドに決めました。

ゲストが安心して楽しめるよう装花やテーブルクロスにひと工夫

インクルーシブな結婚式のために、装花や会場コーディネートにもおふたりならではのこだわりが。それは、聴覚や視覚に障がいのあるご友人のために欠かせない工夫でした。

ゲストが安心して楽しめるよう装花やテーブルクロスにひと工夫

美晴さま:聴覚障がいのある友人に「(装花は)どんな工夫をした?」と聞いて返ってきたなかに、「お花の高さを下げて飾る」というのがあったんです。理由は、耳が聞こえない分、口の動きで会話を読み解くため、新郎新婦やゲストの顔が見えるようにする必要があるからです。手話をするにしても顔の周りで行なうので、お花は高くしないように飾りました。

朋之さま:もうひとつこだわったのは、テーブルクロスの色です。自分自身、結婚式に参列したときに、白やオフホワイトのクロスの上に皿があると見分けがつかなくて、グラスも倒してしまいそうで、怖かったという経験がありました。

会場見学のとき、会場のテーブルセッティングでロイヤルブルーのクロスが使われて、その上に白い皿やカトラリーが乗っていてとても見やすかったので、自分たちの結婚式でも同じ色のクロスを選びました。

美晴さま:あとは、ロービジョンの友人にはサポートが必要なこともあるので、隣り同士になるように…など、ゲストに気を遣わせることがないよう配席にもこだわりました。

音響や映像の最新技術を導入。手元のスマホで映像や表情もしっかりと

ご新郎が、視覚障がいとスポーツの研究をしていたことがきっかけで、筑波大学の落合陽一准教授研究室が開発した、音響と映像のシステムを結婚式で利用できることに。

特に、ビデオ通話アプリ「Zoom」を活用し、コメントなどの映像、ご新郎ご新婦の姿や表情などもスマートフォンで見られることで、ゲストの方が同じ時間を共有できたそう。

音響や映像の最新技術を導入。手元のスマホで映像や表情もしっかりと

朋之さま:披露宴では、視覚障がいの方々でも分かるような映像や音響を取り入れました。それを実現するため、筑波大学の落合陽一先生や研究室の皆様のサポートをいただけたのは本当に良かったです。

まず、Zoomを使って、上映されている映像などが手元のスマホで見られるようにしました。音響は、新郎新婦が会場を移動する場所にあわせて、複数のスピーカーで音楽を流して“音を移動させる”ことで、新郎新婦がいまどのへんにいるか分かるように工夫しました。

こっそりと準備してきたお互いのサプライズに感激!

披露宴では、おふたりがお互いへの“サプライズ”を準備。ご新郎からご新婦には、バンド演奏とご新婦のお父様からの手紙を。そして、ご新婦からご新郎へのビッグサプライズにとても感激したようです。

こっそりと準備してきたお互いのサプライズに感激!

朋之さま:美晴を驚かせるために、1年近くスタジオに通いながらみんなと練習したり、ボイトレに通ったりして、バンド演奏を準備しました。(美晴さまから朋之さまへのサプライズとして)有名サッカー選手からのサプライズ映像は人生の絶頂。自分たちの名前も呼んでくれて、めちゃくちゃ嬉しかった。9年前の自分に言ってあげたいですね。信じないだろうけど、「ちゃんと生きていれば良いことあるよ」って。

美晴さま:お互いがお互いを驚かせようと、サプライズのやり合いになってましたね。それぞれで準備していたこともあったので、何かしらサプライズもしてくるのかな~って、お互いが思っていた気がします。あとで披露宴のプログラムを全部見返してみたら、「すごく詰め込んだな」って。でも、どれも外せなくて、時間の許す限り詰め込みました。

朋之さま:結婚式を1年延期したのですが、結果、延期して良かったと思っています。余興や映像などの準備を考えると、絶対に間に合わなかった。Zoomや音響のシステムの協力も得られなかったかもしれないし。延期をしたことで、できることが増えました。予期せぬことは人生そりゃある。でもそれに備えて、どうポジティブにしていくか、というのが大事だと思いました。

プロデューサー(プランナー)のサポートに感服「波長が合う方が担当で良かった」

「アニヴェルセルの好きなところ」をうかがうと、担当プロデューサー(プランナー)の名前が。アニヴェルセルでは、おふたりがゲストのために考えたアイデアを可能な限り実現したい、そして、おふたりにも笑顔で楽しんでほしいと願いながら、ご新郎ご新婦をサポートしています。

プロデューサー(プランナー)のサポートに感服「波長が合う方が担当で良かった」

美晴さま:人に注目されるのが苦手で結婚式には乗り気ではなかったのですが、担当のプロデューサー(プランナー)の中村さんがたくさんヒアリングしてくれて、それに助けられました。できること・できないことをはっきりと言ってくれて、 「一緒にがんばりましょう」という感じが嬉しかったです。

演出などを詰め込んだわりに無理のない範囲でできたし、途中、私たちの結婚式に“お手上げ”とならず、最後までていねいにサポートしていただけて感服しました。ふたりでいると私が手伝うことしかできないけど、結婚式はたくさんのスタッフの方が彼を助けてくれました。

朋之さま:大きく2つあって、ひとつは“人”です。特にプロデューサー(プランナー)の中村さん。極端に言うと、3人で挙げたくらいの感覚。どんどん出てくるアイデアに対して、「美晴さんにとってどうか」「ゲスト様にとってどうか」とすべて受け止めてくれました。音響や映像など演出の面で協力してくださった筑波大学の方々とのやりとりも全部調整してくれて。ぼくたちと波長が合う方が担当で良かったです。

もうひとつは、ぼく、子どもの頃からお台場が好きで。打合せのたびにワクワクしながらアニヴェルセル 東京ベイに行っていました。

アニヴェルセルだから叶えられた「高砂からの景色は一生忘れない」

結婚式まで、おふたりにはそれぞれの想いがあり、結婚式を通して、さまざまな学びや成長があったと話していました。おふたりにとって結婚式とは…。

アニヴェルセルだから叶えられた「高砂からの景色は一生忘れない」

美晴さま:私はもともと、家族とすべてを共有したり、自分の話をしたりしない性格ということもあり、結婚式はハードルが高かったんです。

でも、障害のある方と結婚することで、私が何を考え、何を言うか、そして、周りがどう思うかということをすごく考え、人にやさしくなるには…、ご縁を大事にするには…、ということについて考える機会にもなりました。ゲスト一人ひとりのことを考えることで、人生において貴重な学びを得られたと思います。

朋之さま:一言でいうと、結婚は「ステージに上がること」。結婚して親に喜んでもらう、という普通に憧れていたから、それができたことでステージに上がれた気がします。みなさんにとっては簡単なことだろうけど、自分が障がい者になってからはステージにすら上がろうと思わず、「仲間も同じで楽しめないだろう」「どういう不便があるだろう」というマイナスなことばかり考えていました。

26歳まで普通に生きていたし、9年前に入院していたときはこんな日が来るとはまったく想像できなかった。高砂から見た景色は一生忘れないと思います。

ハート

美晴さま:結婚式を通して、列席してくださったみなさんに、自分たちのことをよく知ってもらえたと思っています。私たちは助けてもらわないといけない…その想いをしっかりと伝えられたことで、何かあったときにサポーターとして助けてもらいながら、今後の生活がもっと豊かになっていくんだろうなって。

朋之さま:アニヴェルセル 東京ベイは閉館してしまいましたが、ぼくたちの結婚式はアニヴェルセルだからできたと思っています。もし将来、障がいのある方々が結婚式をするならアニヴェルセルを選んでほしいし、そういう方々のためにぼくたちを相談役として使ってほしい。そうした繋がりが残っていけば嬉しいなと思います。

\期間限定フェア開催中♡/

この記事を書いた人
アニヴェルセル公式ライター

アニヴェルセル公式ライター

記念日のプロとして、記念日研究を行っています。結婚式はもちろん、あらゆる記念日情報を取りまとめてお届けします。

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