結婚したら扶養に入るべき?メリット・デメリット・条件を確認

結婚したら扶養に入るべき?メリット・デメリット・条件を確認

結婚を機に、寿退社やパートへの転職を考える人は少なくないでしょう。そこで考えておきたいポイントが、配偶者の扶養に入るかどうかです。

扶養に入ると今後の働き方や家計に影響がでるため、慎重に検討したいものですが、「扶養に入ったら税金はどうなるの?」「私でも扶養に入れるの?」など、さまざまな疑問を抱いている方もいるでしょう。

今回は、扶養の基礎知識や入る条件、手続き方法について解説します。配偶者の扶養に入るか否かで悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

(※2024年1月時点の情報を基に記載しています)

目次

扶養とは

一般的に「扶養」とは、「経済的な理由などから自立的な生活を送れない人の面倒を見ること」の意味で、扶養家族とは、扶養している人(扶養者)の収入で生活している人を指します。例えば、まだ就労できない子どものいる家庭では親が扶養者になり、子どもが扶養家族になります。

扶養に入れるかどうかは扶養家族の年間収入(所得)によって決まり、扶養家族の各種保険料などは扶養者が払います。結婚して寿退社をしたり、結婚後にパートに切り替えたりして収入が少なくなっても、扶養に入ることで年金や保険、税金などの経済的な負担を軽くすることができるのです。

扶養家族に入るか否かで、税金や社会保険制度、働き方などに大きな影響がでます。このことに留意し、入るかどうかを検討しましょう。

税金(所得税や住民税)における扶養

扶養者は、所得税や住民税において配偶者控除(配偶者特別控除)が受けられます。この制度は、扶養家族がいることを考慮し扶養者の税負担を軽くするために設けられました。

扶養者の所得税と住民税は、以下の計算式で算出されます。

年収-給与所得控除額(55万円~195万)-基礎控除額(所得税は48万円・住民税は43万円) 

計算して0円またはマイナスになった場合、税金はかかりません。また、住民税の計算式は基本的に所得税と同じですが、自治体によって変わります。

社会保険(厚生年金・健康保険)における扶養

扶養される側は、保険料や年金に関する優遇を受けられます。一定の条件を満たせば、扶養者の社会保険に加入でき、病気やケガなどのときも扶養者と同じように保険が適用されます。

ただし、社会保険の加入で判断する年収は、交通費手当など労働の対価以外に支払われるものも含まれます。また、加入できるのは配偶者・子・孫・兄弟姉妹ですが、同居しているかは問われません。

収入と扶養の関係

扶養の内容は被扶養者(扶養される者)の収入によって変わり、よく「〇〇万円の壁」と呼ばれます。年収と住民税・所得税・社会保険料・配偶者控除の関係を表にまとめました(2024年1月現在の法令)。

100万円の壁:住民税が課税される

多くの自治体では、年収100万円を超えると住民税の所得割が課されます。所得割とは、前年の所得に応じて負担する税金のことです。

100万円を超えた場合の住民税額は、パート代などの給与から98万円(給与所得控除55万円+住民税の基礎控除43万円)を引いた残りの額に税率10%をかけた金額です。

103万円の壁:所得税が課税される

年収103万円を超えると、所得税がかかります

なぜかというと、基礎控除38万円と給与所得控除65万円をあわせた103万円以内の収入であれば控除額で相殺されるため、所得がないとみなされるからです。

よく聞く「103万円の壁」とは、「年収が103万円以内なら扶養に入れます(扶養内で働けます)」という意味です。

106万円の壁:社会保険の加入条件になる人も

従業員数101人以上の企業で一定以上の働き方をしている場合は、短時間労働者でも社会保険に加入する必要があります。一定以上の働き方とは、週の所定労働数が20時間以上であることや雇用期間が2ヶ月以上であることです。

つまり、年間106万円(=8万8,000円×12ヶ月)が、社会保険の加入条件に当てはまるかどうかのボーダーラインです。社会保険に加入すると給与から健康保険料や年金が引かれるため、手取り額を減らしたくない人は「106万円の壁」を意識する必要があるでしょう。

130万円の壁:社会保険の加入条件になる

年収が130万円未満の場合は、扶養者の社会保険に入ることが可能です。被扶養者に保険料の負担はありません。しかし、年収が130万円以上になると社会保険に加入しなければならないため、自身で社会保険を支払う必要があり扶養には入れません。

ただし、扶養者もしくは被扶養者が自営業の場合は厚生年金の加入対象者ではないため、社会保険は関係ありません。自営業の場合は国民健康保険に加入する必要があります。

150万円の壁:扶養者の配偶者特別控除の満額上限

扶養者が受けられる配偶者控除は、配偶者の給与収入が150万を超えると段階的に少なくなり、201.6万円以上でゼロになります。

扶養者の年収と配偶者の年収に応じて控除額は変わり、扶養家族の年収が201.6万円以上になると、配偶者特別控除も受けられなくなります。

配偶者の扶養に入れないケース

失業保険を日額3,612円以上受給している場合、扶養に入れません。扶養に入るためには、日額3,611円以下でなければならないことに注意しましょう。

受給日額は、退職前の収入によって決まります。収入が高いほど日額も高くなるので、退職後に扶養に入ることを検討している場合は、日額の概算を確認しておくと安心です。

結婚後に扶養に入るメリット

扶養に入ると、経済的なメリットが得られます。結婚を機に退職したり、働き方を変えたりして扶養に入ることを検討している人もいるかもしれません。

具体的にどのようなメリットがあるのか、扶養者(扶養する側)と被扶養者(扶養される側)に分けて紹介します。

扶養される側:保険料などの支払いが免除される

例えば、妻が夫の扶養に入ると、妻の年金や健康保険料などの支払いが免除されます。年金や健康保険料は収入にかかわらず支払う必要がありますが、退職やパートへの転職などで配偶者の扶養に入ると、支払う必要はなくなります。

なお、扶養家族が増えても、扶養者が支払う年金や健康保険料の額は上がりません。家族単位で社会保険料の負担を抑えられます。

扶養する側:配偶者控除を受け、手取りが増える

例えば、妻が夫の扶養に入ると、夫は「配偶者控除」などの税金の控除を受けられるため、手取り額が増えます。

なぜ手取り額が増えるのかというと、課税対象である所得が控除で減り、税金の負担が軽くなるからです。

結婚後に扶養に入るデメリット

扶養に入るデメリットは、主に被扶養者に生じます。扶養に入ると収入や働き方に制限がかかり、将来もらえる年金も減る可能性があります。

これらのデメリットについて、具体的に解説します。

扶養される側の年金額が減少する可能性がある

扶養に入ると年金を払う必要はなくなりますが、自身で厚生年金を払っていないため、将来受け取れる年金額が減る可能性があります。

被扶養者は国民年金(老齢基礎年金)の3号被保険者になるため、厚生年金には加入できず国民年金のみに加入します。よって、扶養者は厚生年金と国民年金を受け取ることができますが、被扶養者が受け取るのは、国民年金のみです。

令和5年度の年金月額は以下のとおりです(67歳以下の場合)。

  • 国民年金(満額)…66,250円
  • 厚生年金(夫婦2人で国民年金を含む、満額)…224,482円 

2つの年金額には大きな差があることがわかります。扶養に入るか否かで老後の生活が大きく左右される可能性があることに注意しましょう。

扶養される側の働き方や収入に制限がでる

扶養内で働くためには、所得の上限を超えないようにしなければならないため、働き方が制約されることも。被扶養者の税制上の年収ボーダーラインは以下のとおりです。

  • 配偶者控除・配偶者特別控除を満額受ける場合…150万円以下
  • 社会保険の扶養に入る場合…106万円~130万円未満(扶養家族勤務先の規模による)

以上のように、被扶養者の収入に制限が生じます。「もっと稼ぎたい」「もっと手取り額を増やしたい」と思っても上限を意識する必要があり、仕事の選択肢も限られる可能性が。

結婚後に扶養に入ることを検討しているカップルは、将来自分がどんな働き方をしたいのか、十分に考慮しましょう。

扶養に入るタイミングは退職後5日以内

扶養に入るタイミングに決まりはありませんが、退職した翌日から5日以内が望ましいでしょう。

なぜなら、退職日翌日から扶養の手続きまでに空いた期間には、国民健康保険料と国民年金保険料の支払い義務が生じるからです。そのため、扶養の手続きをする前に、一旦国民健康保険と国民年金の加入手続きをし、保険料を支払う必要があります。そのあと、改めて扶養に入る手続きを行うのは、時間や手間がかかってしまいます。

国民年金保険料は月額16,520円ですが(2023年度) 、国民健康保険料は前年の所得によって決まります。退職してからすぐに扶養の手続きを行えば、これらの保険料を払う必要はありません。退職したら、なるべく早めに扶養の手続きを行いましょう。

扶養の手続き方法

扶養に入るための手続きは基本的に扶養者の会社を経由するため、被扶養者⇒扶養者⇒勤め先⇒健康保険組合・年金事務所の流れで進めていきます。扶養に入ることが決まったら速やかに書類を揃え、手続きを行いましょう。

最後に、これらの手続きについて詳しく説明します。

社会保険は扶養する側の会社で

扶養に入るためには、扶養者が加入している健康保険組合や年金事務所に所定の書類を提出する必要があります。一般的に必要な書類は以下のとおりです。

  • 健康保険被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)…扶養に入るための申請書
  • 扶養家族になる人の戸籍謄本(または戸籍抄本)か住民票…扶養者との続柄を確認するための書類
  • 扶養家族になる人の退職証明書や課税(非課税)証明書、確定申告書の写し…扶養家族の年収を確認するための書類
  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書…配偶者控除を受けるための申請書

ケースによっては、これ以外の書類を要することがあります。詳しくは、扶養者の勤務先に確認しましょう。

控除手続きは年末調整・確定申告で

扶養者が会社員の場合、税金面の配偶者控除の申請は年末調整で行います。扶養者が自営業(個人事業主)などの場合は自身で確定申告し、配偶者控除を申請しましょう。

確定申告で配偶者控除を申請するためには、申告書の第一表と第二表内の指定項目に必要な情報を記入して提出します。扶養家族の基本情報をはじめ、扶養者と扶養家族、それぞれの収入に応じて定められている控除額を記入する必要があるので、あらかじめ確認し控えておきましょう。 

扶養に入るか入らないかはよく検討して決めよう

扶養に入ると保険料免除や配偶者控除など、税制上の優遇措置が受けられます。扶養者と扶養家族、両方が経済的なメリットを得られるでしょう。

しかし、扶養に入るためには年収の壁をクリアする必要があるため、収入や働き方が制限されます。また、扶養家族は国民年金のみに加入しているため、老後にもらえる年金額が扶養者よりも少なくなるといったデメリットも。

結婚したあと扶養に入るかどうかは、おふたりの将来設計を見据えたうえで、慎重に検討してくださいね。

 

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この記事を書いた人
ライター 瀬上友里恵

ライター 瀬上友里恵

地方在住のフリーライター。詩人として創作活動も嗜む。2児の母として子育て奮闘中。

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