地域によって違う!知っておきたい現代の「結納」のマナー

地域によって違う!知っておきたい現代の「結納」のマナー

結婚式の前に、ご両家がそろう場となるのが「結納」です。最近は、顔見せの食事会だけというカップルも多いですが、古くからある日本の伝統的な儀式を行うことでご両家の絆が深まるという声もあります。

でも、いざ結納をやろうと思っても、分からないことだらけ…。そこで、「結納品って?」「結納ではどんなことをするの?」「いくらかかるの?」といった疑問を一つひとつ解消していきましょう。

結納は平安時代にもあった伝統の儀式

「結納」は、結婚や婚約の成立を、品物などを取り交わして行う儀式。古くは、今から約1400年前(平安時代)、仁徳天皇の皇太子が黒媛を妃として迎えるにあたり、絹織物や酒・肴などの「納采」が贈られたと、日本書紀に記されています。元は婚礼儀式として貴族、公家や武家の間でのみの儀式が、明治時代になり、庶民の間でも行われるようになりました。結納の語源は、結婚を結び申し入れる際に男性から持ち寄る酒肴を「結いのもの」と呼んでいたことが由来、または、結び申し入れる婚礼を申し込むという意味の「言い入れ」など諸説あります。

正式結納と略式結納の違いとは?

結納は元来、仲人を立てて行うもの。仲人が結納品を持って、ご両家を行き来するのが正式な形で、これを「正式結納」と言います。一方で、ご両家が料亭やホテルなどで一堂が会す「略式結納」も増えています。結納の内容は同じですが、略式結納では、仲人を立てずにご両家が直接やり取りをすることも多く、その場合は、男性側のお父様が進行役を務めるようです。

結納を行う場所は、料亭やホテルが主流になってきていますが、元は、女性の自宅で行うもの。そのため、男性側から一方的に「結納はしない」というのは失礼にあたるので、結納をやるかどうか、まずはカップルでよく話し合った後、おふたりの親御様に相談しましょう。

結納の準備!日取りはいつが吉日?

結婚式の半年前までに行うのが一般的で、遅くとも3か月前までには済ませておきます。日取りは、大安、友引、先勝(午前中であれば吉)の順で吉日とされていますが、ご両家の予定を合わせることは大変なので、あまり気にされない方も増えているようです。

なお、結納の式自体は、15~20分程度。結納品を自分たちで用意する場合、結納品をセットして結納を行い、式後に全員で食事などを楽しむというのが大まかな流れです。

結納品の内容と並べ方を確認

用意する結納品は、地域によってさまざま。呼び名も変わるため、出身地が異なるカップルの場合は、親御様も交えて事前にしっかりと確認することが必要となります。 結納品すべてを一から準備するのはとても大変ですが、百貨店や専門店で、地域に合わせた「結納セット」が購入できます。

1.【結納料】…関東では「御帯料(おんびりょう)」、関西では「小袖料(こそでりょう)」と呼び名が変わります。金額は地域によって異なりますが、50万円、100万円などキリが良い金額が理想です。

2. 【長熨斗(ながのし)】…本来はアワビを干して、叩いて伸ばしたもの。延命長寿の願い、そして貴重な食物を贈ることで、最高のおもてなしを表します。

3. 【末広(すえひろ)】…白無地の扇子。“末広がり”の形状がおめでたいとされる縁起物で、白い色が無垢な心を表しています。

4. 【勝男武士(かつおぶし)】…鰹節。関東の結納品で、男子の慶事に用いられる縁起物。「松魚料(まつうおりょう)」と呼ぶ地域もあり、肴料として、現代では現金を包むことも。

5. 【柳樽料(やなぎだるりょう)】…柳樽は酒料を表し、本来は酒樽(お酒)を贈りますが、現代ではお金を包む場合がほとんど。関東では「家内喜多留(やなぎだる)」と呼ばれ、食事料も含まれます。

6. 【寿留女(するめ)】…スルメは、日持ちがする=永く幸せに、噛むほどに味のある夫婦にという願いを込めて。

7. 【子生婦(こんぶ)】…昆布は、喜ぶ(よろこぶ)という意味と、生命力の強さから“子宝”の象徴とも言われています。

8. 【友白髪(ともしらが)】…白い麻糸を束ねたもの。麻のように強く結ばれ、「ともに白髪の生えるまで」との願いが。

9. 【目録(もくろく)】…結納品の品目を記した紙。

10. 【結美和(ゆびわ)】…指輪のこと。月桂冠の葉がついた枝を冠のように作ったものを飾り、名誉と栄光の印を表します。

11. 【高砂(たかさご)】…尉(じょう)と姥(うば)を模した人形。ともに白髪が生えるまでと、長寿の願いを込めた品。

地域によって、上記以外の結納品(呼び名)もあります。飾る結納品の数は、3品目、5品目、7品目、9品目と奇数になるように組み合わせますが、9品目が正式な数です。

結納は関東式・関西式で大きな違いが

結納は日本の伝統的な婚礼儀式ということもあり、風習やしきたりによって地域差があります。今回は、大きく「関東式」と「関西式」に分けてご紹介します。

結納品は、品数によってかかる金額も変わりますが、正式な数の9品目(5~20万円)を目安に考えます。また、結納の後に、ご両家そろって食事をされると思います。この時の食事代(一人1~2万円程度)は、自宅の場合は女性が、料亭など外でやるともう少し費用がかさむので、その分を考慮して、結納品の酒肴料として男性側が包むことが多いようです。いずれにしても事前に、結納品にかかる費用を計算しておき、それを元に、カップルで費用を分担していきます。

関東式…男性側と女性側がそれぞれ同じ結納品を用意して、結納品を“取り交わす”のが関東。9品が正式で、「目録」も含み、結納品は白木の台に並べて乗せます。あわせて、ご両家とも受領書にあたる「受書(うけしょ)」も用意します。女性から男性への結納返しは「御袴料(おんはかまりょう)」と呼ばれ、結納金の半額程度のお金や品物で返します。

★主な結納品: 1.御帯料(結納料)、2.長熨斗、3.末広、4.勝男武士、5.家内喜多留、6.寿留女、7.子生婦、8.友白髪、9.目録

関西式…基本的に男性側のみ結納品を用意して、女性に“納める”のが関西。女性側は「受書」を渡すのみになります。結納品は松竹梅鶴亀の飾りとともに、一つひとつの台に乗せます。9品目内に「目録」は含まれず、結納返しもありませんが、最近は、結納料の1割程度をお土産として持参する場合も。

★主な結納品:1.小袖料(結納料)、2.長熨斗、3.末広、4.松魚料、5.柳樽料、6.寿留女、7.子生婦、8.結美和、9.高砂

結納

結納品を簡略化する場合、①結納料、②長熨斗、③末広、④勝男武士/松魚料、⑤家内喜多留/柳樽料…の順で優先させましょう(関東は「目録」も結納品に含むため、3品の場合、結納料、長熨斗、目録となります)。

酒肴料(家内喜多留/柳樽料、勝男武士/松魚料)は、結納料の1割が目安とされています。酒料と肴料と、結納品が2つある場合は奇数になるように金額を調整します。

結納の服装は和装でも洋装でも可

結納と言うと、女性は振袖、男性は紋付き袴ではないといけないかと思われがちですが、略式結納であれば、和装でも洋装でも問題ありません。女性は記念にと、振袖を着られる方も多いようですが、洋装であれば、フォーマル過ぎないスーツやワンピースがおすすめ。ただし、ワンピースでもジャケットは着用を。男性は、ブラックスーツなどが良いでしょう。

結納の服装は和装でも洋装

結納の流れと「口上」をチェック

今回は、仲人を立てず、ご両家のみで行う「略式結納」の場合を中心に、大まかな流れをご紹介します。また、結納当日の準備の仕方はどこで行うか(場所)によって多少変わってきます。

▼[01]結納品の飾り付け

女性の自宅で行う場合、まず、女性側が「結納返し(結納品)」を下座(左側)に置いておきます。男性側も同じように、上座に「結納品」を飾ります。料亭などで行う場合は、どちらが先に準備しても大丈夫です。

飾る場所は「床の間」が基本ですが、料亭など外で結納を行う場合、床の間がないことも。その時は、毛せんを敷いて床の間の代わりにし、その上に結納品を飾り付けていきます。

関西式では、結納品は新郎とご家族が飾り付けします。その間、新婦は席を外すのがマナーです。また、結納は床の間の中央にくるように飾ります。

▼[02]出席者着席

結納品の飾り付けがすべて終わったら、一度全員が部屋を出て、あらためて、男性とご家族、続いて女性とご家族が入室します。男性側は上座(結納品を前にして右側)に、女性側は下座(結納品を前にして左側)に座ります。座る順は、結納品から近い順に、ご本人、お父様、お母様となります。

▼[03]結納のはじまりの挨拶(口上)

結納で交わす言葉は「口上(こうじょう)」と言います。結納のはじめと締めの挨拶は、進行役となる男性のお父様(不在の場合は男性本人、もしくはお母様)が行います。

<口上の一例>
男性のお父様「この度は、◯◯(女性の名前)と息子◯◯(男性の名前)の縁談をご承諾くださいまして、誠にありがとうございます。本日はお日柄も良く、これより結納の儀を執り行わせていただきます」

▼[04]結納品を納める(取り交わす)

男性のお母様が結納品を乗せた台を女性の前に運び、一礼。お母様が席に戻ったら、男性のお父様が口上を述べて一礼します。

<口上の一例>
男性のお父様「そちらは◯◯家(男性側)からの結納でございます。幾久(いくひさ)しくお納めください」

結納品のうち、女性は「目録」の中をあらため、お父様、お母様の順に渡し、全員で目を通した後、女性が口上を述べてご家族で一礼します。女性のお母様が結納品を床の間に持っていき、そして「受書」を男性に渡して一礼を。

<口上の一例>
女性「ありがとうございます。幾久しくお受けいたします」

※関西式は、男性側からの結納品しかないので、この後、「婚約記念品のお披露目」に進みます。

次に、女性のお母様が、男性側に結納品を乗せた台を運んで一礼。お母様が席に戻ったら、女性側のお父様が口上を述べて一礼します。

<口上の一例>
女性のお父様「そちらは◯◯家(女性側)からの結納でございます。幾久しくお納めください」

男性は結納品の「目録」を手に取り、中をあらため、お父様、お母様に渡して全員で目を通し、男性が口上を述べて一礼。お母様が贈られた結納品を床の間に持っていき、「受書」を女性に渡して一礼します。

<口上の一例>
男性「ありがとうございます。幾久しくお受けいたします」

▼[05]婚約記念品のお披露目

関西式では、指輪も結納品のひとつになっています。このタイミングで、ご両家にお披露目しましょう。関西以外でも、女性は婚約指輪を、男性は婚約記念としていただいた品(時計など)を、口上とともにお披露目します。

<口上の一例>
女性「この度は婚約記念品として、◯◯さんから婚約指輪をいただきました」

▼[06]結納の締めの挨拶(口上)

はじめと同様に、締めの挨拶も男性のお父様が行います。続いて、女性のお父様が返礼の口上を述べ、全員で挨拶をして、結納はお開きとなります。

<口上の一例>
男性のお父様「本日は誠にありがとうございました。おかげさまで無事に結納を納めることができました。今後とも末永くよろしくお願いいたします」

女性のお父様「こちらこそありがとうございました。今後とも末永くよろしくお願いいたします」

こちらで結納が完了となります(時間は15~20分程度)。口上は言いなれない言葉なので、どうしても覚えられない場合は、紙に書いて言葉を読み上げるのでも問題ありません。結納の後は、ご両家そろって食事をしながら歓談の時間を楽しみましょう。

結納は地域のしきたりに合わせて行う

結納は地域差があるものなので、結納を行う地域(主に女性側)のしきたりに合わせます。男性と女性の地域が関東と関西で異なる場合、結納の仕方も変わってくるので、ベースとなる結納の流れを知った上で、事前に細かい部分を確認しておく必要があります。

また、仲人を立てない結納の場合、結納を取り仕切る“進行役”は、男性側のお父様となります。お父様が不在の場合は、男性(新郎にあたる方)、男性側のお母様でも問題ありません。ホテルで提供している結納プランなどを利用する場合、会場のスタッフが進行役を務めてくれることもあるので、結納を行う場によって臨機応変に対応しましょう。

結納品はいつまで保管しておくべき?

結納品は、結婚式が終わるまで部屋に飾っておくものですが、場合によっては結婚式が半年先になることもあるので、結納後1か月程度飾っておき、いったん片づけて、結婚式前にまた飾り直しても問題ありません。

結婚式後は、昆布やスルメはいただき、目録、末広、高砂は保管を。その他、熨斗や白木の台などは神社に納め、お焚き上げをしていただきます。ただし、神社によっては結納品をお焚き上げできない場合もあります。事前に確認すると良いですね。

また、関西式の結納品は、松竹梅鶴亀の飾りなどを使って“羽子板”に作り変える専門店もあるので、想い出として残しておきたい方は参考にしてみてください。

結納品はいつまで保管しておくべき?

いかがでしょうか。結納は地域によって違いがあり、結納金など費用もかかりますが、結納品は百貨店で購入でき、儀式も20分程度です。準備することは多いですが、ご両家そろって伝統的な儀式を一緒に行うことで、絆が強まるというのも納得できますよね。

おふたりだけで気軽にできるものではないので、結納を行うかどうか検討しているカップルは、もし行うとしたらどのような形式になるかというのも含め、親御さんともよく相談しましょう。

この記事を書いた人
ライター 佐藤

ライター 佐藤

女性誌WEBサイトのエディター&ライターを経て、フリーに。現在は、美容やライフスタイルを中心に女性向けの記事やエンタメ系グラビア誌のインタビューも担当。

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