結婚を機に退職をする「寿退社」。伝え方や手続きを確認
結婚を機に退職することを寿退社といいます。最近は結婚後も仕事を続ける方も多く、寿退社という言葉を耳にする機会が減っているかもしれませんが、結婚を機に一度働き方を変えたり転職を考えたりしたい方もいるでしょう。そこで今回は、寿退社をするメリット・デメリットや退職までの流れをご紹介いたします。寿退社の予定がある方は、挨拶例や退職後の手続きもあわせて参考にしてください。
- 目次
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- 「おめでたい理由」で退職するので「寿」
- 寿退社のメリット
- 寿退社のデメリット
- 会社に報告するタイミングは?
- 上司への伝え方とポイント
- 上司への報告から退職までの流れ
- 仕事の引継ぎ
- 挨拶回り
- 身の回りの整理
- 最終日のあいさつ
- 必要書類の受け取り
- 寿退社当日の挨拶例
- メールで寿退社の挨拶をする場合の文例
- 退職後に必要な手続き関係
- 健康保険・年金の手続き
- パートナーの扶養に入る場合は?
- 雇用保険(失業保険)の手続き
- 税金の手続き
- 寿退社は手順に沿って円満に!
「おめでたい理由」で退職するので「寿」
寿退社とは結婚を理由に退職することを指します。退職の理由が結婚というおめでたいことであるため「寿」が使われています。寿退社という言葉が誕生した背景には、女性にとって結婚を機に仕事を辞めて専業主婦になることが幸せとされていた時代があったためです。近年は結婚に対する考え方が多様化しており、結婚後も仕事を続けて家庭と両立する方も増えています。
しかし、もちろん結婚を機に家庭に入りたい、家事に専念したい、と寿退社に憧れを持つ方もいらっしゃるでしょう。または、どうすべきか悩んでいる方も多いと思います。まずは、あらためて寿退社のメリットやデメリットを確認しておきましょう。
寿退社のメリット
寿退社をするメリットは、退職してから専業主婦(主夫)になることでパートナーや家族との時間を長く持てることです。家事に専念できるので、仕事と家庭の両立に悩むこともないでしょう。また、仕事を辞める理由がお祝い事であるため、円満退職できることもメリットのひとつです。会社に退職の意思を伝えるときに「何か不満があるのか」「他の会社に転職するのか」といった疑問を投げかけられず、上司や同僚から祝福を受け、前向きな雰囲気の中で退職できるでしょう。
さらに、結婚式の準備に十分な時間を充てることもできます。「結婚式は後悔なくやりきりたい!」と望んでいる方に寿退社は大きなメリットがあります。
寿退社のデメリット
寿退社するデメリットは、カップルのうち一方が仕事を辞めるため世帯収入が減ってしまうことです。将来に必要な教育費や医療費、老後の生活費などの経済的な不安を感じることもあるかもしれません。また、仕事を辞めることで社会との接点が薄くなり社会から切り離されたような感覚になる方もいるようです。
退職後は自由な時間を趣味に充てたり地域の行事に参加したりして、家庭以外のコミュニティを作っておくと安心でしょう。出産後や子育てが落ち着いてから再就職をするのもひとつの方法です。
会社に報告するタイミングは?
結婚を機に退職をする場合、退職予定日の3ヶ月前までに退職の意思を伝えることが大切です。3ヶ月前に退職の意思表示をする理由は、新しい人材の雇用準備や仕事の引継ぎに時間がかかる場合があるからです。寿退社はおめでたいことではあるものの、急な退職は上司や同僚に迷惑がかかり円満に退職するのが難しくなってしまうこともあります。
上司への伝え方とポイント
退職の意思を伝える際は、まず直属の上司に相談します。上司の手が空いたタイミングを見計らって「ご相談があるので、お時間を作っていただきたいのですが」と伝え、あらためて話す時間を作ってもらいましょう。上司に相談するときは、結婚の報告をしたあとに退職を申し出るのが社会人としてのマナーです。また、結婚式に会社関係の人を招待する場合は、結婚式の日取りや招待状を送る範囲などを上司と相談するとよいでしょう。
上司に報告する際に気をつけたい注意点は、上司より先に職場内で結婚の報告や退職の意思を伝えないことです。直接聞く前に間接的に耳に入ってしまうことで、不快な気持ちになる上司もいます。マナーとしてSNSに結婚の報告を投稿したり職場内で寿退社すると宣言したりするのは控えましょう。
上司への報告から退職までの流れ
上司に結婚の報告と退職の意思を伝えたあとは、退職に向けて準備を進めます。ここでは、上司への報告後の退職までの具体的な流れについてご紹介します。
仕事の引継ぎ
まずは担当する業務の引継ぎを進めます。後任の人が早い時期に決まった場合は一緒に業務を行い、流れを丁寧に教えます。後任の人がなかなか決まらない場合や口頭で教えるのがむずかしい業務については、前任者がいなくなっても業務を進められるようにマニュアルを作成しておくことをおすすめします。担当業務に関することで退職後に会社や取引先に対して迷惑がかからないように、後任の人にしっかり引継ぎましょう。
挨拶回り
仕事でお世話になった人への挨拶回りも大切です。取引先など社外の人へ挨拶する場合は上司と相談のうえ、上司や後任の人と一緒に挨拶回りをしましょう。社内の人に挨拶する際は相手の仕事の状況を確認しながら、休憩時間など手が空く時間帯を選んで挨拶をします。特にお世話になった人に挨拶する場合は、メールよりも口頭で伝えるのがよいでしょう。退職日までに話す機会がない人にはビジネスマナーを踏まえたうえで、メールで挨拶をしましょう。
身の回りの整理
デスクやロッカーの荷物も少しずつ整理しましょう。社員証や余った名刺、社用携帯など会社から支給されたものは、いつまでにどのような状態で誰に返却すればよいのか確認しておきます
最終日のあいさつ
出社の最終日は、社内でお世話になった人や同じ部署の人に最後の挨拶をします。挨拶する際は、職位の高い人から順番にこれまでの感謝の気持ちを伝えます。お世話になったお礼にお菓子など、ちょっとしたギフトを用意すると、話しかけるきっかけもつかみやすいのでおすすめです。
必要書類の受け取り
退職後に必要になる書類を会社から受け取ります。会社から受け取る必要がある主な書類は以下のとおりです。
- 雇用保険被保険者証
- 離職票
- 源泉徴収票
社会保険に加入している場合は、年金手帳や健康保険資格喪失証明書も忘れずに受け取りましょう。上記の書類は確定申告や再就職などの手続きに必要です。退職後に必要な手続きについては後ほど解説するので、そちらを参考にしてください。
寿退社当日の挨拶例
最終日は朝礼や夕礼で少し時間をもらい、最後の挨拶をします。最終日の挨拶のポイントは、派手な挨拶は避けることです。寿退社は私事であるため、できるだけ手短にすませましょう。挨拶する内容で押さえておきたいことは以下のとおりです。
- 挨拶の時間をいただいたことへのお礼
- 退職する理由
- 職場での想い出
- 締めの言葉
<寿退社当日の挨拶例>
「お疲れ様です。本日はお忙しい中、最後の挨拶をする機会を作っていただきありがとうございます。私事ではありますが、先月入籍をし、退職をすることになりました。入社当時は右も左も分からずにおりましたが、皆様がやさしくサポートしてくださったおかけで本日まで仕事を続けることができました。今まで大変お世話になりました。ありがとうございました」
メールで寿退社の挨拶をする場合の文例
次に、メールで挨拶する場合のポイントと文例をご紹介いたします。一斉送信する場合は、BCCを使用し、他の受信者のアドレスを伏せるのがマナーです。社外の人にメールで挨拶する場合は、後任者についても触れておきましょう。メールに記載する項目は以下のとおりです。
- 件名
- 宛名
- 退職する理由
- 職場での想い出
- 後任の紹介
- 締めの言葉
<メールでの挨拶例>
「件名:退職のご挨拶(〇〇部 氏名)
社員の皆様
私事ではありますが、先月入籍をし、〇月〇日をもって退職することになりました。
本日まで仕事を続けてこれたのは皆様の温かいサポートのおかけです。
心より感謝申し上げます。
今後は、〇〇さんが業務を担当しますので、温かく見守っていただけますと幸いです。
メールでのご挨拶となり申し訳ございません。
今まで大変お世話になりました。
末筆ではございますが、今後の皆様のご健康とご活躍をお祈り申し上げます。
退職後に必要な手続き関係
退職後は、健康保険や年金、雇用保険、税金などのさまざまな手続きを行う必要があります。ここでは、退職後に必要な手続きについて詳しくご紹介いたします。
健康保険・年金の手続き
退職後は、健康保険と年金の切り替えのための手続きが必要です。健康保険と年金の手続き方法はパートナーの扶養に入るかどうかや、パートナーが会社員か自営業かどうかで異なります。パートナーの扶養に入る場合の手続きについては後ほど解説いたします。パートナーの扶養に入らない場合やパートナーが自営業の場合は、最寄りの役所で国民健康保険と国民年金の加入手続きを行いましょう。
パートナーの扶養に入る場合は?
会社員のパートナーの扶養に入る場合は、退職日の翌日から5日以内にパートナーの会社で扶養に入る手続きをしてもらいます。手続きの際には、健康保険被扶養者届の提出が必要です。年収130万円を超えると扶養に入れないので、退職後にパートなどの仕事に就く場合は年収額に注意しましょう。任意継続被保険者制度を利用すれば、退職しても最大2年間は退職前の会社の健康保険を継続できます。ただし、保険料は全額自己負担になります。
雇用保険(失業保険)の手続き
失業保険は雇用保険の加入者を対象に、再就職するまでの手当を支給する制度です。退職後に再就職する意思を持ち、転職活動を行っている人は失業手当を受け取ることができます。転職する予定がある場合は、失業手当の受給手続きを行います。失業手当の受給手続きには前職の会社から郵送される離職票が必要です。離職票が手元に届いたら持参し、最寄りのハローワークで受給申請の手続きを進めましょう。
専業主婦/夫は給付対象外
雇用保険に加入していても、結婚を機に退職をして専業主婦(主夫)になると失業手当の給付対象から外されてしまいます。また、失業手当の受給期間は離職日の翌日から1年間と決まっており、申請期間を過ぎると受給できません。ただし、引っ越しや妊娠などを理由に退職をしなければならない場合は特例が認められています。
妊娠した場合は受給期間が最大3年間延長され、引っ越しの場合は特定理由離職者に認められれば3ヶ月の給付制限がなくなるため、7日間待機したあとに失業手当を受給できます。
税金の手続き
住民税は前年度の所得額に応じて税額が決まるため、退職した翌年も住民税を納付する義務があります。給与天引きで住民税を納めていた場合は前職の会社に、市町村から郵送される納付書で納税する普通徴税に切り替える手続きをお願いしましょう。普通徴税は6月、8月、10月、1月の年4回です。1~5月に退職する場合は退職する月の給与から一括で徴収されますが、6月以降に退職する場合は未払い分を一括または分割で納税する必要があります。
寿退社は手順に沿って円満に!
結婚を機に退職する寿退社はおめでたいことですが、会社への報告や引き継ぎなどは丁寧に行い、「飛ぶ鳥跡を濁さず」の状態で退社できるようにしましょう。また、社内でお世話になった方への最後の挨拶は、上司と相談しながら出社最終日までに終えるように余裕を持ったスケジュールで進めることが大切です。引継ぎや挨拶回りをつつがなく終わらせ、円満な退職をしてくださいね!