親族・友人が結婚式で着る着物【留袖・訪問着・振袖】の種類&選び方
結婚式のお呼ばれで初めて着物を着るとき、「振袖を持っているけど、成人式と同じように着て行ってもいいのかな」「洋装と同じように着物にもNGのマナーがあるのかな」など、悩んでしまうこともあるのでは?
時代にあわせて結婚式で着る着物のマナーは変化していますが、結婚式のお呼ばれで着る着物には、最低限守っておきたい決まりがいくつかあります。
そう聞くと、「なんだか難しそうだから着物を着るのはちょっとやめておこう…」と尻込みしてしまいそうですが、現代では、日常的に着物を着る機会があまりなく、結婚式で着物を着るのは、日本の伝統美を味わえる絶好の機会。
ワンピースなどの洋装と比べると、着物は流行に左右されることが少なく、さりげなく体型カバーもしてくれるというメリットも。着物の色と柄、そして帯との組み合わせを考えるのも、洋装とまた違った楽しさがあります。
そこで、結婚式に参列する際に着る着物のマナーから、ご親戚やご友人など、立場別に最適な着物の選び方についてまとめてみました。
- 目次
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- 結婚式に着物で出席するときに覚えておきたいマナーは“3つ”
- 着物選びのポイントは、着物の【格】と【紋】
- 結婚式のゲストで出席する際に着る着物の選び方
- 黒留袖(くろとめそで)
- [黒留袖にあわせる帯]
- 色留袖(いろとめそで)
- [色留袖にあわせる帯]
- 訪問着(ほうもんぎ)
- [訪問着にあわせる帯]
- 付け下げ(つけさげ)
- [付け下げにあわせる帯]
- 振袖(ふりそで)
- [振袖にあわせる帯]
- 色無地(いろむじ)
- [色無地にあわせる帯]
- 小紋(こもん)
- [小紋にあわせる帯]
- \着物の下は「肌着」と「長襦袢」/
- \ゲストの着物は白と黒の色に注意/
結婚式に着物で出席するときに覚えておきたいマナーは“3つ”
では、いざ着物を着ようと思ったとき、どんなことに気をつけたらよいのでしょうか。着物に詳しくない方でも、まずは、次の3つを覚えておきましょう! ご親族側・ご友人や職場側、どちらの立場で出席する場合でも、結婚式の着物選びがスムーズになります。
●着物には種類がいくつかあり、「親族」と「ゲスト」では着られる種類が異なる
●着物には「格」があり、ご新郎ご新婦との関係によって選び方を変えることも
●着物の「紋」=“家紋”は、紋の数・種類・入れ方(技法)などで格が変わる
着物の種類のことはなんとなく知っているけど、「格」や「紋」って…? そこで、着物の「格」や「紋」について、次の項目でご紹介していきます。
着物選びのポイントは、着物の【格】と【紋】
まず、着物は【格】の高い順から「礼装(第一礼装)」、「略礼装(準礼装)」、「外出着」、「普段着」となります。主な種類は次の通りです。
礼装(第一礼装)
白無垢、色打掛、本振袖(大振袖)、黒留袖、喪服など
略礼装(準礼装)
色留袖、訪問着、付け下げ、振袖、色無地など
外出着
付け下げ小紋、小紋など
普段着
紬、浴衣など
結婚式のシーンでは「白無垢」、「色打掛」、「本振袖(大振袖)」は花嫁の衣裳です。そして≪普段着≫は、結婚式で着られることはめったにありません。それ以外は、ご親族やご友人、職場関係でお呼ばれしたゲストが着られる着物になります。結婚式のスタイルやお呼ばれする立場にあわせて、最適な着物を選ぶことが大切です。
着物の格とあわせて、気をつけたいのが【紋】です。紋は、一つ紋・三つ紋・五つ紋と、数の多いほうが格も高くなり、紋の数によって入る位置も決まっています。
一つ紋…背縫いの中央に入れる「背紋(せもん)」のみ
三つ紋…背紋+両袖の後ろに入れる「袖紋(そでもん)」の3つ
五つ紋…背紋+袖紋+両胸に入れる「抱紋(だきもん)」の5つ
「黒留袖」は必ず五つ紋と決まっています。「色留袖」や「訪問着」などにも紋の入った着物がありますが、着物は紋の数によって格が変わります。そのため、同じ結婚式に職場の上司や先輩が着物を着ていくようであれば、紋の数で格上にならないよう注意が必要です。
また、先に書いた通り、紋=家紋のこと。その種類は何百以上にもなりますが、おそらく「自分の家の家紋が分からない」「家紋がない」という方も多いのではないでしょうか。その場合は、誰でも使うことができる「通紋(つうもん)」を使いましょう。貸衣裳(レンタル)の場合も通紋が使用されています。
紋は、染めや刺繍など着物に入れる技法もいくつかあり、それによって格が変わってきますが、今回はまず、着物の【格】と【紋】の数に違いがあることだけしっかり覚えておきましょう。
結婚式のゲストで出席する際に着る着物の選び方
着物の【格】と【紋】の基本が分かれば、あとは、親族側とゲスト側、どちらで結婚式に列席するかによって着ていく着物を選ぶだけ! 昔は格下とされていたものでも、結婚式が多様化している現代では着られる着物も増えています。
ただし、既婚・未婚によって着られる着物が変わるため、年齢や立場にふさわしい着物選びを間違えないようにしましょう。また、あわせる帯によっても格が変わります。今回は、それぞれの着物におすすめの帯もあわせてご紹介します。
黒留袖(くろとめそで)
●既婚女性が着る着物で、婚礼では、主にご新郎ご新婦のお母様、祖母、既婚の姉妹・親族、仲人婦人が着ることができます。
●色は黒。黒留袖には必ず「五つ紋」と「白の比翼(ひよく)仕立て」(※1)がついていることが決まりです。
●上半身に模様はなく、腰から裾に向かって日本伝統の和柄「吉祥文様(きっしょうもんよう)」(※2)などの縁起の良い柄があしらわれています。
●裾全体に模様が続くように染められていて、この模様のつけ方を「絵羽模様(えばもよう)」(※3)と呼びます。一般に、裾模様の面積が小さく、模様が入っている位置が低いほど年配の方向けとされています。
[黒留袖にあわせる帯]
黒留袖には、金・銀・白を基調にした、袋帯(ふくろおび)と呼ばれる帯をあわせます。模様は、吉祥文様や有職文様などがおすすめ。格を落とさず、“慶びが重なる”という意味を込めて、二重太鼓で結ぶのが基本です。
※1「白の比翼仕立て」…礼装の着物の内側につける白い着物のこと。昔は、肌襦袢の上に白い着物を着ていましたが、現代では簡略化され、黒留袖の内側に比翼(白い布)がついているものがほとんどです。
※2「吉祥文様」…松竹梅、桜、菊、牡丹、扇、矢羽根、蝶、亀甲、鹿の子、青海波(せいがいは)など、古くから縁起の良いとされている植物や自然の風景、物品などの模様のこと。
※3「絵羽模様」…着物全体が一枚の絵のように、背や脇、衽(おくみ)、衿(えり)、袖などに模様が続くように染められた模様のこと。追いかけ柄(パターン化された柄が繰り返し入っているもの)の反物と違い、絵羽模様は着物に仕立てたとき、縫い目で絵が途切れずつながるように製作するには手間がかかるため、格も高くなります。
色留袖(いろとめそで)
●黒留袖と同じ「絵羽模様」で、黒以外ではない色の着物になります。
●五つ紋付きの色留袖は黒留袖と同格に。結婚式婚礼では無紋でもOK。無紋、または一つ紋にすると、お子様の行事など、結婚式以外でも着られる機会が幅広くなります。
●結婚式のお呼ばれに使える着物で、既婚・未婚に関係なく着ることができます。
●ご友人や職場同僚などの立場で着る場合、色留袖は「親族のお祝い事」で着用されることが多いため、少人数結婚式や地域によっては、訪問着のほうがよい場合も。また、会社の上司や先輩なども列席する場合、紋の数で格上にならないよう注意が必要です。
[色留袖にあわせる帯]
黒留袖と同様、金・銀・白を基調に、縁起の良い模様の袋帯で、二重太鼓結びをします。
訪問着(ほうもんぎ)
●留袖同様「絵羽模様」がほどこされていますが、留袖とは違い、肩や袖にも模様が入っています(総模様)。
●既婚・未婚に関係なく、結婚式のお呼ばれに使える着物です。
●昔は紋付きでしたが、婚礼以外のパーティやお子様の行事にも着られるようにと、最近は紋のない訪問着が主流です。
[訪問着にあわせる帯]
留袖にあわせるような豪華な袋帯、もしくは、金銀糸を使っていない華やかな唐織の袋帯など、訪問着の色やデザインにあわせて選びます。結び方は二重太鼓を。
付け下げ(つけさげ)
●訪問着を簡略化して作られているため、着物全体に模様は入っていますが、控えめな柄付けになっています。ただし、模様によっては訪問着と見分けるのが難しい着物もあります。
●一つ紋付きの付け下げは訪問着と同格に。
●既婚・未婚に関係なく、結婚式のお呼ばれに使える着物です。
[付け下げにあわせる帯]
結婚式のシーン以外では名古屋帯を使いますが、結婚式では縁起の良い模様の袋帯がおすすめです。二重太鼓に結びます。
振袖(ふりそで)
●着物全体に華麗な「絵羽模様」がほどこされていて、ほかの着物と比べて振袖が長いのが特徴です。
●本振袖(大振袖)は礼装となり、婚礼では花嫁衣裳になることも。お呼ばれで着る場合は、略礼装の中振袖が一般的です。成人式に使った振袖を着ても問題ありませんが、鮮やかな赤や金銀の色を多く使っているものは花嫁衣裳にも使われるため、そうした色柄は避けておきましょう。
●未婚女性が着る着物で10代後半~20代におすすめですが、現代では、30代以上の未婚女性でも、色柄を抑えたシックなタイプを選び、華美にならない帯や小物などで華やかさをプラスすることで大人の着こなしが楽しめます。
[振袖にあわせる帯]
振袖にあわせた色・柄の袋帯や丸帯を使います。二重太鼓やお太鼓結び、文庫結びのアレンジなど、帯結びの種類によって雰囲気を変えられます。
色無地(いろむじ)
●黒以外に染め上げた無地の着物。
●一つ紋付きが略礼装となるため、婚礼に最適な装いになります。また、三つ紋は訪問着と同等以上の格となるため、親族の結婚式で着用しても。
●既婚・未婚に関係なく使える着物です。
[色無地にあわせる帯]
着物に模様が描かれていないため、帯で華やかさを演出します。金銀糸を使った袋帯を選び、二重太鼓結びをしましょう。
小紋(こもん)
●本来は外出着で婚礼にはあまり向いていないため、目上の方が多い場面では避けたほうが無難ですが、ご友人を中心としたカジュアルな披露宴など、結婚式のスタイルによって着られる場面も。
●留袖や振袖、訪問着は模様がすべて上向きに描かれているのに対して、小紋の模様は、上下がないのが特徴です。小紋は種類がいくつかありますが、婚礼では最も格式の高い「江戸小紋」(※4)がおすすめ。
●既婚・未婚に関係なく使える着物です。
[小紋にあわせる帯]
小紋が外出着のため格をそろえるために名古屋帯を使うことが多いですが、結婚式では、袋帯を使いましょう。結び方は二重太鼓を。金銀糸をふんだんに使った帯よりは、控えめで品のある帯がおすすめです。
※4「江戸小紋」…遠目では無地のように見えるほどの細かい柄を、少ない色数で染め上げた模様のこと。江戸時代に発展した、小紋のなかでも代表的な種類のひとつ。紋を入れることで略礼装にもなります。写真は、江戸小紋を代表する文様のひとつ「鮫文様(さめもんよう)」。
\着物の下は「肌着」と「長襦袢」/
着物を着る際の下着には、肌着(肌襦袢/はだじゅばん)と長襦袢があります。肌着は肌の上に着る物、長襦袢は肌着と着物の間に着る物。長襦袢は、着物が肌に直接触れて汚れないために着る物で、着物の滑りもよくなります。2つの大きな違いは、着物を着たとき、袖や裾から見えないのが肌着、見えるのが肌襦袢と覚えておきましょう。
\ゲストの着物は白と黒の色に注意/
淡い色合いから鮮やかな色合いまで、着物の色はとても華やか。年齢に合った色選びも大切ですが、花嫁衣裳である白無垢、ご親族が着る黒留袖とかぶらないよう、婚礼のシーンでは、「白」や「黒」を基調とした着物は避けるのがマナーです。
結婚式では、どの立場でお呼ばれしたか、既婚か未婚かによって、着物の選び方が変わってきます。いくつか決まりはあるものの、ポイントをおさえておけば難しいことはありません。お呼ばれした結婚式にふさわしい和の装いで、ご新郎ご新婦のハレの日に花を添えましょう!
- この記事を書いた人
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ライター 佐藤
女性誌WEBサイトのエディター&ライターを経て、フリーに。現在は、美容やライフスタイルを中心に女性向けの記事やエンタメ系グラビア誌のインタビューも担当。